TTMSoftware

航空力学講座~旋回(縦機動)編~

縦機動(ループ等)の旋回半径や旋回率も解説します。
水平旋回の旋回半径、旋回率はこちら

目次

垂直面の旋回半径
垂直面の旋回率(ピッチレート)
垂直面と縦機動の差

垂直面の旋回半径

R = V2 68579 n-cosθ
R:旋回半径[NM] V:TAS[kt] θ:ピッチ角[°] n:荷重倍数[G]
<図2>

ここでは迎え角は常に0°、つまり「ピッチ角が進行ベクトルと等しい」という前提で考える。
図2より縦の旋回(ループ機動)時の向心力Fは
F=L-Wcosθ

Lは荷重倍数nと重量WよりL=nWなので
F = Wn-Wcosθ = W(n-cosθ)

重量Wは、質量m × 重力加速度gなので
F=mg(n-cosθ) ・・・①

また向心力Fは速度をV、旋回半径をRとすると、下式となる
F= m V2 R ・・・②

①式、②式より
mg(n-cosθ) = m V2 R

Rについて解くと
R = V2 g(n-cosθ) ・・・③

gは重力加速度9.8[m/sec2]、VはTAS[m/sec]なので[kt]から換算
また、アウトプットが[m]になるのを[NM]に換算すると
R = (V×1852/3600) 2 1852×9.8(n-cosθ) = V2 68579(n-cosθ)

垂直面の旋回率(ピッチレート)

Q = 1092 (n-cosθ) V
Q:ピッチレート[°/sec] V:TAS[kt] θ:ピッチ[°] n:荷重倍数[G]

360°旋回する時間Tは、旋回半径Rと速度Vから
T= 2πR V

ピッチレートQ[°/sec]は
Q = 360 T = 360V 2πR ・・・④

④に③を代入して
Q = 360V 2π g(n-cosθ) V2 = 180 π g(n-cosθ) V

gは重力加速度9.8[m/sec2]、VはTAS[m/sec]なので[kt]から換算すると
Q = 180 3.14 9.8(n-cosθ) V×1852/3600 = 1092(n-cosθ) V

水平旋回と縦機動の差

縦機動と水平旋回では、大きく異なる。
水平飛行n[G]引き起こしは水平旋回(n-1)[G]に近似
背面飛行n[G]機動は水平旋回(n+1)[G]に近似

水平旋回時と縦機動時の旋回半径や旋回率はどの程度違うか実際に確認します。
表1はTAS300ktの水平旋回と縦機動をそれぞれ各G毎に旋回半径をftで算出したものです。
表2は同様に旋回率を算出したものです。
「水平」は水平旋回、「縦〇」はピッチ角〇°時の縦機動を表します。
下表から、縦機動と水平旋回では、旋回半径も旋回率も大きく異なります。
ただし、水平飛行からn[G]の引き起こしは水平旋回(n-1)[G]と近い値になります。
例えば、4G引き起こしの旋回は、3Gの水平旋回と近い値になります。
図2を見れば分かるように、これは引き起こし時は1G分重力で相殺されるからです。

G水平縦0°縦90°縦180°
2.04604797439872658
3.02819398726581993
4.02059265819931595
5.01628199315951329
6.01348159513291139
<表1:TAS300kt旋回半径[ft]>
G水平縦0°縦90°縦180°
2.06.33.67.310.9
3.010.37.310.914.6
4.014.110.914.618.2
5.017.814.618.221.8
6.021.518.221.825.5
<表2:TAS300kt旋回率[°/sec]>